毒やぶ短編集シリーズ

毒やぶ短編集
短編集の説明と言われても……
完結竹とんぼの時代
作品の長さ:9,719文字
(0)読者数:26人
理屈は分かっていても、実現するための手立てが無いのだよ。
もしくは、無い訳はなかろうと思う反面、技術的問題の山積で諦めているとすべきか。
頑張って続けていればなんとかなるといった類のものではない気がする。
にも拘わらず、命がけのプロジェクトを酷く原始的な施設で成功させなければならない命令が出ている。
完結壊せない壁
作品の長さ:4,704文字
(1)読者数:34人
蝶の羽ばたきの如く、ほんの小さな出来事が、人から人へ僅かばかり大きく語られ、何十億の人に知れる頃には、世界をも飲み込む巨大な嵐を創り上げる。
わかっていても、もはや嵐にまで育ってしまった蝶の羽ばたきを、止める手立てを持たぬのが人間の悲しい所だ。
この事を伝えず、生涯だんまりを決め込んだ私は、類なき卑怯者かもしれない。
完結九竜国
作品の長さ:5,113文字
(0)読者数:17人
画像著作者 anieto2k
昔々、そのまた遥かなずうーと昔。
とある国のとある地は九竜王国と呼ばれていた。
一見何一つ悩みの無い楽天地とうかがえるも、時の荒波に飲まれ揉まれる事数世紀、まこと悲運の連続であった。
身の毛がよだつような恐ろしい出来事が、それはゝ数知れず語り継がれてきている。
これから紹介するのは、文字にするのを禁じられてきた歴史を語り部達が口伝したものである。
完結診療所の厄日
作品の長さ:9,184文字
(0)読者数:17人
とりあえず、今日は一人も犠牲者が出なかった。
きっと、普段の行いが良いからだろうと思い込み、酔っ払って寝てやろう。
おやすみなさい。
完結歩いて来た道
作品の長さ:4,362文字
(0)読者数:21人
とんと釣りなど心得の無い者だが、無機な竿に慈愛の感情を覚えた。
何も語らず、何も愚痴らず、泥に塗れて悔しかったろう。
見ればそこら中が掠り傷だらけである。
どれ程主に尽くしたものか。
手に取り上げれば、川藻の絡んだ糸先には、朽果てた魚の頭蓋が、哀れな表情で釣れている。
主を失った竿に釣られるとは、竿程更に無念であったろう。
完結玄武池
作品の長さ:5,051文字
(0)読者数:17人
翌朝になると、少女が泣きじゃくり乍ら、荒地を掻き分けミイラを探し歩いている。
手には茨の棘に削り取られた傷から血が滲み、湿地に入り込んで行くと、足と言わず顔と言わず、衣服から何もかも泥だらけになってくる。
完結似顔絵師
作品の長さ:10,113文字
(0)読者数:17人
暫くと言っても根っからの化け物、百年二百年の暫くである。
この間、有名どころでは最初の浮世絵師、菱川師宣と名乗っていた時期もあった。
同時期に二人の師宣が存在し、互いに協力しあって浮世絵の技法を確立している。
師宣の生年が、元和四年から元禄七年六月四日、または寛永七年もしくは八年とされ、享年が六十四から六十五歳、あるいは七十七歳とされている由縁だが、今となっては真実を知る者は久蔵のみである。