小説 / 青春・友情
完結 陽菜子さんの容易なる越境
作品の長さ:34,274文字
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――今あなたがいる場所を、決めた頃のあなたへ。
▼この物語は二つの未来の物語。
あなたが選択し得た一つの未来は、左側のクワドラントに生きる未来。
世界の人間の80%が選ぶこの未来は、古き産業時代の文脈を語り継ぎ、
己を何者かに磨き上げることで結実する未来。
あなたが選択し得たもう一つの未来は、右側のクワドラントに生きる未来。
世界の人間の20%が選ぶこの未来は、新たなる情報時代の文脈を開拓し、
自分が何者でもあり得ることで、豊富なお金と自由な時間を手にする未来。
選択の時、二つの未来が等価にあり得たことをあなた自身が覚えている。
これは、あなたに贈る、あの時あなたが下した選択の物語。
▼この物語は二人の少女の物語。
少女キコは未だ自分が存在している世界の仕組みを知らない。
知らないがゆえに古典の教師になることを夢見ている。
ゆえに迷い、悩みながら「境界」の概念に想いを馳せる。
少女陽菜子(ひなこ)は自分の回りを彩る世界に精通する。
精通するゆえに独立起業の道を世界に叩きつける。
ゆえに迷わず、太陽のようにあらゆる「境界」を微笑みをたたえて超えていく。
キコと陽菜子は親友同士。
同じ「側」にいられた時間は終わりを告げ、やがて二人は選択の時をせまられる。
これは二人の少女が織りなす、あなたにもあった選択の時の物語。