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更新日時:2016.03.27


小説 / 青春・友情

連載中 青春の秘事

作品の長さ:115,052文字

(0)読者数:63

 津田正直は元公務員で後期高齢者、埼玉県北部の某市の郊外に妻と住んでいるが最近体力記憶力の減退を実感する。妻が生活全般を仕切り彼の言動までチェックするのに違和感を覚えている。

 ある春の日、同年輩で一人住まいの平野フミ子と遇う。彼女の低音で若々しい声はどこかで聞いたことがあると思うが思い出せない。彼女に惹かれ彼女の過去が知りたくなるが聞きたいことを聞けないうちに晩秋になり彼女は老人ホームに入居を決心し家を売って去る。別れに際しフミ子は津田に古い日記の焼却を依頼する。彼は同時期の自分の日記と「フミ子の日記」を照合してみる。

 「フミ子の日記」と津田の「回想」と「日記抄」が昭和三二、三年の東京における大学生の生活と赤線「鳩の街」のありさまを明らかにしてゆく。

 津田は会社員の長男だが二浪して私大の英文科に入学した。受験の失敗を一発逆転のホームランのように挽回しようと小説家を目指し彼なりの文学修行をする。詩人を目指し苦学する豊田虎次と知り合い交友を深める。

 女性体験を通じて小説のネタを得ようと女中のひろ子と遊び、ポン友の北村敏夫と浅草のストリップや玉の井を探訪し鳩の街で遊ぶ。 

「鳩の街」の近くで中学生の家庭教師をしたことから鳩の街の地理に明るくなる。初めて遊んだトマヤのサツキに魅了された津田は遊ぶ金欲しさに、牛乳配達、豊田の私塾の講師、デパートの歳暮の配達などのアルバイトに精力を割く。その結果修得すべき単位を落とし窮地に立つ。

「フミ子の日記」から昭和33年1月末で廃業する前後の鳩の街の「トマヤ」の様子が明らかになる。サツキとその妹分のキヨミとタマエは姉妹のように仲良く助けあっていた。フミ子の日記と津田の日記を照合した結果平野フミ子の前身はキヨミだったことが判明する。

 津田は大晦日に泊りサツキに愛を告白するが彼女は彼が彼女の生活に深入りすることを嫌いはぐらかす。津田は「蟻の街のマリア」の新聞記事を読み己の行動を恥じ学生時代に小説家デビューという夢を諦めサツキと別れ地道な生活に戻ると決心する。

「鳩の街」の最終営業日昭和33年1月29日の夜津田はサツキと一夜を共にしたが二人の思いはかみ合わず不本意な別れとなる。

 翌日津田は風邪をひき高熱に悩まされ親元に帰り親の介護を受ける。高熱が去るとともに彼女への思いも冷めてあきらめがつく。

 フミ子の日記4,5,6で仲良し3人組の廃業後の様子とフミ子の家族と経歴が明らかになる。フミ子は満洲生まれの引揚者で母親は満洲に渡る前に玉の井で働いていたことがあった。困窮していた母と娘フミ子と弟を救い死亡した母の葬儀を出してくれたのは玉の井時代の同僚宮田シゲだった。

 弟の学資と生活費を稼ぐためフミ子はシゲの夫と肉体関係を持ち鳩の街の女になる。彼女は鳩の街が廃業した後は自分が目指したとおり洋裁学校の生徒になった。タマエは五反田のキャバレーに勤め、サツキは結婚を前提に馴染み客の小野寺の借りたアパートに住み夜は池袋のバーで働くが小野寺と合わないことがはっきりしてくる。

 4月フミ子が二人を新宿に誘い再会した。サツキは男と別れたいのでフミ子の部屋に一時同居させてくれと頼むが自分の生活が大事なフミ子は断ってしまう。フミ子は5月に二度目の会を企画するがサツキは手紙で小野寺と別れ母親の待つところに帰ると伝えてくる。   

6月になってサツキのことが気になったフミ子はトマヤに電話しサツキが行方不明になっていることを知る。彼女は母の同僚宮田シゲに助けられたのに自分はサツキをすげなく断ったことを後悔する。サツキもタマエもその後の消息は不明のままフミ子の日記は終わっていた。

 歳末になり津田は約束通り彼女の日記を焼却し、サツキやタマエのその後を知りたいとフミ子宛の手紙を書く。歳末の夕方手紙を投函するために出かけると業者がフミ子の家を解体していた。帰りに公園で子供たちが遊んでいるのを見て、サツキの運命を想像し、人生の危うさ、儚さをしみじみ感じ、振り返って我が身の幸せを思う。

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