30代半ばになっても身を固める気配が全くないふたりの娘、牧夫は生涯孫の顔を見ることはないものと半ば諦めていた。ところがふたりが相次いで結婚し、直ぐに子供が生まれた。初孫のTheoと二番目の元気。牧夫は降ってわいたような幸運に、身を粉にしてふたりの孫の世話に邁進した。と言っても、世話をしていると思っているのは本人ばかりで、妻の雅子から見れば牧夫はふたりの孫に遊んでもらっているとしか思えなかった。一時体調を崩した牧夫にとっては、孫達との触れ合いは何物にも代えがたい宝物であり、健康増進剤であった。孫のお陰で充実した日常が続いた。しかし、3年目の冬、Theoの父親のHenryが仕事の都合で米国に帰国することになった。祖父とふたりの孫とのごくありふれた日々の交流を淡々と綴ったメルヘンの世界。