完結 人間になりたい~Even if I am King~
作品の長さ:103,279文字
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国王の弟の息子である尊人(たかひと)が、イギリス留学から帰国して公務を始めた矢先、国王と尊人の父が交通事故で命を落してしまい、尊人が王位を継承する事になった。身内の反乱もあったが、無事国王となる尊人。しかし、尊人はこの国の王室制度を自分の代で終わらせるつもりであった。
国王の血統を絶やす目的で、子孫を残さないと決めた尊人だが、政府から無理矢理結婚させられる。一方、留学時代からの友人である未来(みらい)と健斗(けんと)の二人が近衛兵となって尊人を支えていた。未来と健斗は尊人の事を想っているが、尊人はどちらを好きなのかはっきりしない。がっちり三角関係なのだった。
公務で中東諸国へ出かけた尊人だが、誘拐され、廃墟に監禁されてしまう。しかしこの機会を利用し、ライブ中継で国王制の廃止を宣言する。これで目的を遂げたかに思えたが、助け出されて帰国した尊人を待っていたのは、国王には政治的権限がないという虚しい現実だった。これ以上「お飾り」の国王ではいられないと思い詰めた尊人は、クーデターを起こして一時的に権力を握り、国王制を廃止しようと考えた。しかしあえなく失敗に終わり、未来、健斗と共にイギリスへと出国する。
イギリスのロンドンで暮らす内に、健斗は自分が邪魔者だと思い込み、独りで帰国してしまう。だが、二人で暮らし始めた未来と尊人の関係は一向に進展せず、未来が尊人にキスをした結果、尊人が恋しているのは未来ではなく、健斗なのだとお互いに気づいてしまう。未来が健斗を呼び戻し、今度は未来が独りで帰国する。
自衛官になって出世していく未来だが、1年半ぶりにロンドンに遊びに行くと、尊人にそっくりな赤ん坊が出現していた。尊人のクローンベイビーだった。尊人の血統を残し、王政を復活させる企てがあると考えた未来は外務省に入り、尊人たちをロンドン郊外へ移し、誰にも見つからないように気を配る。
尊人のクローンである遥貴(はるき)は、時々遊びに来る未来の事が大好きだった。だが、12歳になった遙貴はとうとう見つかってしまい、本国に連れ去られる。未来が見つけて助け出そうとしたが、遙貴は未来と一緒に居たいがために、国王になると決心する。
未来は外務省を辞め、遙貴の教育係になる。自分にはわがままを言う遙貴に手を焼いていたが、尊人の助言は「かまってやって」だった。遙貴は未来に「手を出して」もらいたかったのである。助言に従った結果、遙貴の反抗期は収まる。
遙貴が成人すると、王妃を迎えるようにと言われる。やはり尊人と同じ苦悩を味わう遙貴に、未来は大統領になれ、と言う。その計画通り、政権が交代し、国王制から大統領制へと変わろうとしていた。大統領選挙に立候補するのは遙貴のはずだったが、より適任である未来が立候補する事になり、当選する。未来は遙貴との結婚宣言をする。
大統領の任期を終え、未来と遙貴は二人の家を手に入れた。遙貴はやっと何者でもない、ただの人になった。やっと自由を手に入れたのだった。